37-6「どうしたら正しく理解することができるか?」64

ホーム聖書通読ガイド信仰雑話3

(マルティン・ハイデッガー(1889-1976年)によって、
「現象学的解釈はーー存在者の存在の構造の規定である」という定義が、「文献解釈」に応用されるとき、
◉「その著者からまったく離れ客観的存在者」となって独立した文献の「それ自身をそのもの自身において示すところのもの」の「解釈」が、目標となることを教えられました。
「同一文献」を対象とし、「同一文献」の上に立ちながら、その「文献」の背後に立つ、
◉「著者」の方向への解釈と、
◉「文献」そのものの「存在」の方向への解釈と、まったく相反する二つの方向への解釈が、成立することとなったのです。
これが人類誕生以来、求め続けてきてようやくたどり着いた現代の「文献解釈学」です。
◉それに基づいて、聖書をみます。)

(6)神と人との対話

(6)「良心的応答」を呼び覚ます神

「対論」によって、神は、選民イスラエルの
◉「自己欺瞞」と
◉「自己主張」とを破砕しました。

「ああ、私(ヨブ)の願いがかなえられ、私の望むものを神が与えてくださるとよいのに。」(ヨブ記6:8)

とか、

「だれか私(ヨブ)に聞いてくれる者はないものか。
見よ。
私を確認してくださる方、全能者が私に答えてくださる。
私を訴える者が書いた告訴状があれば、私はそれを肩に負い、冠のように、それをこの身に結びつけ、私の歩みの数をこの方に告げ、君主のようにして近づきたい。」(ヨブ記31:35ー37)、

という、ヨブの思い上った
◉「自己主張」は、友人との
◉「対論」では破られませんでしたが、神との
◉「対論」でまったく砕かれました。

この「対論」こそが、 神が人の
◉「良心的応答」を呼び起こすための
◉「方法」だったのです。

この記事で旧約聖書での「対話」を終わります。

次回からは新約聖書での「対話」をみます。

ここで旧約聖書のもっとも重要な課題は何かを要点的に振り返ります。

◉「宇宙的な破局」の根本的な
◉「原因」を、聖書は
◉「創造主」に対する
◉「主客倒錯」にみています。

その
◉「主客倒錯」の表われとしての
◉「邪推」の克服に
◉「信頼」の
◉「回復」でむかいます。

「信頼」に徹すればするほど、
◉「甘え」の誘発は避けられません。

したがって「選び主」に対するーーその真実に対するーー「信頼」の回復は、「邪推」の克服ですから、
◉「信仰的甘えの暴露」とならざるを得ません。

「選民教育」は、イスラエルに対する「選び主」の
◉「愛しながらの暴露」を特質としています。

旧約聖書のヘブル原典の区分でみると、三段階の時代区分になっています。

◉第一区分(律法)は「選民の育成時代」ですが、そこでは「他力」(賜物)が強調され、
◉第二区分(預言者)は「選民の実践時代」で、そこでは「自力」(課題)が強調されています。
◉第三区分は「選民の失格時代」では、神の「沈黙」が強調されています。

このような選民教育の時代別的展開においても、
◉「他力」と
◉「自力」の相剋、
◉「賜物」と
◉「課題」の相剋が志向されており、
◉「神の沈黙の時代」とは、神は
◉「死んだ」といわせるまでに自らを隠し、神に代わる
◉「世俗的権威者」のみが歴史の支配者として
◉「君臨」するその地平にあって、信仰者は、
◉「未獲得の究極的勝利」を、
◉「既獲得のもの」として、冒険的に
◉全存在を賭ける決断を迫られる時代です。

その迫りに対する人からの応答を代表するのが、燃える炉の火という古典的踏絵を前にしたイスラエルの青年たちの、

「たといそうでなくても王よ、ご承知ください。
わたしたちはあなたの神々に仕えず、またあなたの立てた金の像を拝みません」(ダニエル3:16以下)

という決死の宣言です。

「甘え」の特質は、
◉「受身的愛情希求」ですが、それとは正反対の決断の迫りを、この
◉「たといそうでなくても」は雄弁に語っています。

「たといそうでなくても」という言葉の含蓄は、そのまま
◉「選民教育」を貫いている
◉「信頼」の信仰的特質です。

これは、人間の自己信頼の図式である
◉「のゆえに」と対立する、
◉「にもかかわらず」の表現です。

信仰は、神の真実への絶対信頼ですが、それは、人間の側の条件「のゆえに」ではなく、という自己信頼の拒絶が迫られるからです。

◉「のゆえに」は、神に対する人との関係を
◉「対応」とし、
◉「にもかかわらず」においてのみ、神と人との
◉「逆対応」は初めて「出来事」となるのだからです

ーーーー

信仰雑話>37-6「どうしたら正しく理解することができるか?」64、次は37-7「どうしたら正しく理解することができるか?」65
ホーム聖書通読ガイド信仰雑話3

WordPress.com で次のようなサイトをデザイン
始めてみよう