第二章 第一節 使徒行伝概説 5

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⁋第四に・本書においては、神は聖霊に由て教会内に発生した罪悪と俗化とに対する処置を教えて、キリストの体なる教会の内部を潔め、その基礎を堅くなし給うたと観ている。それは教会に献げる為の土地の売上金を偽ったアナニア・サッピラの死を以て罰せられた記事においてみる事が出来る。又その頃教会にはユダヤ人の中にも、ヘブル語を用いていたユダヤ人等とギリシャ語を用いていたユダヤ人等があり、それぞれ異った背景をもっていた彼等の間で、ギリシャ語のユダヤ人が、その寡婦らが教会の毎日の施済(ほどこし)からもれたというので呟いた。その事を機会に新たに七人の執事が選ばれ、教会の一切の事務に当らせられ、斯くて教会の形式及秩序が保たれたものと観ている(五章一節以下・六章一節以下)。
⁋第五に・教会の指導者は、時代的にもまたその使命の点からも交代すべきもので、それに由て教会が新しく発展すべきよう導かれていたことを示している。神はその教会を形成し導く為、聖霊に由てその指導者を召し、これを訓練し、これを宣教者として立て給う。最初はペテロが本書の前半 (一節—十二章)の中心的人物であるが、後半(十三章以下)ではこのペテロが背景に退くことになり、これに代ってパウロが指導的位置に立って活躍を始めたことが、本書の構造を通して明かにされている。両者の活動の特徴と分野とは、ペテロは「割礼あるユダヤ人の宣教の為に召された器」であり、パウロは「割礼なき異邦人の宣教の為に召された器」であるという、その召命の個性的差に由来するものとみられている(ガラテヤ書二章七ー八節参照)。
⁋教会の形成はつねに、その指導者の個性的多様性をその理想とすることがこれによっても確認される。

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第二章 教会書>第一節 使徒行伝概説 5 終わり、次は第一節 使徒行伝概説 6

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