第二章 第一節 使徒行伝概説 3

ホーム渡辺・岡村著書新約聖書各巻概説>第二章 教会書>第一節 使徒行伝概説

3/8

⁋さて本書の叙(の)べる教会の発達過程は、単に歷史的というよりはむしろ神学的歴史的である。 即ち本書の教会起源観及び教会発達観は、歷史の形で叙(じょ)されていながら、それは純粋に歴史的発展的立場から為された記述ではないことは一見明瞭である。本書を注意深く読むと、そこには教会の発達に対する一定の神学的の枠 (わく)と順序とがある事に気ずかれるからである。 以下本書の特徴を辿るため、本書の神学的枠と観方とを示すと想われるものを幾つかあげることとする。
⁋第一に・本書においては教会の発達は、ひたすら神の聖霊に由る指導が先行的に働いたもので、人はそれに刺戟され・誘導されつつ進んだものとして観られている。例えば最初の原始教会であるエルサレム教会の人々は、主イエス昇天前に彼の口から

「然れど聖霊・なんじらの上に臨むとき、汝ら能力をうけん、しかしてエルサレム・ユダヤ全国・サマリヤ・及び地の極にまで我が証人とならん」

という命令をうけ、そのキリストを証言すべき世界的視野を開かれたにも拘らず、彼等自身で積極的にエルサレム外にまで宣教を広めようとはしなかった(一章八節)。然るにその時神はタルソのサウロによる 教会迫害を用い給うて、エルサレム教会の人々をして已むを得ず、エルサレム外に赴き出でざるを得ざらしめ給うた。 即ち

「サウロ(後のパウロ)は彼の殺さるるを可(べ)しとせり、その日エルサレムに在る教会にむかいて大いなる迫害おこり、使徒たちの他は皆ユダヤ及びサマリヤの地方に散さる………爰(ここ)に散らされたる者ども歷巡(めぐ)りて御言を宜べしが」

ということが結果した(八章一節以下)。更にこの迫害の結果の大きい波紋がアンテオケ教会の創立となった (十一章十九節以下)。またそれがエチオピア伝道の端緒となったことは、主の使がピリポに

「なんぢ起ちて南に向い、エルサレムよりガサに下る道に往け。そこは荒野なり」

と語りかけ給うたことに見られる如くである(八章二十六節)。

ーーーー

第二章 教会書>第一節 使徒行伝概説 3 終わり、次は第一節 使徒行伝概説 4

ホーム渡辺・岡村著書新約聖書各巻概説第二章 教会書>第一節 使徒行伝概説

 
 

コメントを残す

WordPress.com で次のようなサイトをデザイン
始めてみよう