第二章 第一節 使徒行伝概説 2

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⁋この事は、次のことによって更に明かになる。即ち新約書中の書物の配列によれば、本書の著者が一見ルカ伝のそれと同一であることが知られているにも拘らず、ルカ伝には著者ルカの名が添附せられていながら、本書にはそれが除かれているという点である。これは正典編纂における意図的なことであって——故アドルフ・ハルナックが指摘しているように——特に福音書と書簡との連関が、本書の与える鍵によって理解せらるべきものであることを示す為である。いうまでもなくヨハネ伝・エペソ書・コロサイ書及び黙示録等によれば、教会は実に

「世の創の前より、キリストの中に選ばれ」

ていたのである。然しそこに語られている教会はいわば「原」教会である。地上の具体的教会が創設されたのは、使徒行伝の告げる聖霊降臨の日である、というのが新約書の一貫した教会起源観である。他の福音書も凡てその記述をイエスの十字架と昇天で筆を止め、恰も申し合わせたかの如く、教会創設の言及を使徒行伝にゆずっている。かく教会は実に既存の何ものからも非連続的に「上から」、聖霊に由て新しく創設されたものであったとせられているのである。然れば本書理解の鍵がこの点に見られる。

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第二章 教会書>第一節 使徒行伝概説 2 終わり、次は第一節 使徒行伝概説 3

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