第二章 第一節 使徒行伝概説 1

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⁋使徒行伝はルカ伝と同じく、テオピロなる人物に——異邦人なりと想われる——教会創設より、その発展の過程を知らせる為に書かれた書物である。その内容はペンテコステにおける教会の創設から使徒パウロのロマにおける獄中生活にまで及んでいる。しかして、その記述の顕著な特徴は、キリスト教会を、イエスの生前当時彼の周囲に集った弟子たちの群から自然的に且つ連続的に発達してきたものとは観ず、ペンテコステの日に、全く新しく「上より」の聖霊降臨に由て創設せられたものと観ている点に見出される。即ら本書の前篇ともみらるべきルカ伝は、この生前のイエスの許に集った弟子たちの群に対しては、「小さき群」という特別の呼称を与えて、これを「教会」とは呼んでいない。これら両書は斯く「小さき群」と「教会」とを判然と区別していることに注意しなければならない。 使徒行伝がルカ伝の連続であることは、その序文からしても明瞭である。然るに両書はわざわざ正典の中に引き離されて、その中間にはこれと全く色調を異にしたヨハネ伝福音書が置かれている。即ちヨハネ伝という全く独立した書物が、イエスの昇天までの記事を叙べるルカ伝と、教会の創設を語る使徒行伝とを切断することにより、ルカ伝の語る「小さき群」と使徒行伝の語る「教会」とを、断絶的なものとして理解させるのである。

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第二章 教会書>第一節 使徒行伝概説 1終わり、次は第一節 使徒行伝概説 2

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