第一章 第四節 ヨハネ伝概説7

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序  文 (一章一節—十八節)1

⁋ヨハネ伝は一言でいえば、ロゴス・キリスト(神の言なるキリスト)を証しする宇宙的ドラマである。 この序文にはこのドラマの主役が紹介されている。 それは世の創(はじめ)から神と共に在ったロゴス(言)と、 これを悟らざる 暗黒のコスモス (世)と、 その両者の中間に立つ証人ヨハネとである。この序文によれば世の創(はじめ)に神の言 (ロゴス) があり、このロゴスは神であり、全宇宙の創造もこのロゴスによって成った——人はここで創世記が記す創造物語に

「神光あれと云い給いければ光ありき」

とある「言による創造」を想起するであろう。この 創世記の記す創造は、いわばその「外から」の叙述であるのに対し、ヨハネ伝の記すのはその 「内から」の叙述であるという事が出来る。
⁋ヨハネ伝はそのロゴスが受肉した事をその

「言は肉体となりて我らの中に宿り給えり」

と記している(一章十四節)。 ナザレのイエスはその地的誕生と共に始まるのではなくして、彼は神と共に「世の創の前」から在り給いしロゴスであり、その「先在のロゴス」が受肉してナザレのイエスとなったというのである。共観福音書は「ナザレのイエスは実に神の子なりき」という語り方をしているのに反して、ヨハネ伝は「神の言が受肉して人となり給うたのがナザレのイエスに他ならない」と告げる。この序文ではこのロゴスに就いて、先ず第一に彼は「先在のロゴス」であったこと、第二に彼は「創造のロゴス」であったこと、しかして第三に、それが 「受肉のロゴス」となったことを順序的に述べている。第一の・イエス・キリストは「世の創より先在した」という事は聖書の掲げる深遠な真理であり、これはエペソ書・コロサイ書・黙示録等が特に顕著に反映している思想である。本書の語り方は凡てこの「先在のロゴス」という特定の視界からなされている事を再び注意しておきたい。彼が世の創から先在したという想念が、いとも滑らかに次の「創造のロゴス」の理念を導き出してくる。

「万の物これ(ロゴス)に 由りて成り、成りたる物に一つとして之によらで成りたるはなし」

と記されている(三節)。このロゴスが全被造物の創造者であり、全被造物にしてこのロゴスと無関係に存在し得るものはないという断言である。このロゴスは創造にさいし、宇宙形成に与かったし、現に与かりつつ あるという意味で、「形成のロゴス」なのである。

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第一章福音書>第四節 ヨハネ伝概説7終わり、次は第四節 ヨハネ伝概説8

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