第一章 第四節 ヨハネ伝概説6

ホーム渡辺・岡村著書新約聖書各巻概説>第一章福音書>第四節 ヨハネ伝概説

⁋第八に・本書は「此の世界」と「次の世界」とを、現在という一点において把握している。 新約書全体をみると、この二つの世界が、三様に把握せられていることがみられる。その一は・ 共観福音書及びパウロ書簡等におけるそれで、この二つの世界が「時間的前後関係」において把握せられている。しかしてこの二つの世界の限界又は切点が、キリストの「再臨」及び「信徒の復活」となっている。換言すればこの二つの世界は、歷史末的または時代末的に時間的関係においてみられている(マルコ伝十三章・マタイ伝二十五章・ルカ伝二十一章・コリント前書十五章・テサロニケ前書四章十三節以下)、その二は・ヘブル書におけるそれで、これら二つの世界は「空間的上下関係」において把えられている(八章一一五節)。即ちそこには上に天的世界と天的幕屋とが あり、下に天にあるものの型と影なる地的世界がみられている(本書ヘプル書の項参照)。 その三はこのヨハネ伝におけるこの二つの世界の「永遠的現在関係」における把握である。前述の「永遠の生命は」という言において(十七章三節)、この点が明かにされている。 しかしてこの把握の仕方は、本書中各所に散見せられている。

「死にし人、神の子の声をきく時きたらん、今すでに来れり、而して聞く人は活くべし」

という言は、 前掲の言と共に、 本書の「永遠」と 「現在」とを、一点において把握するという把握の仕方を如実に示している(五章二十五節)。
⁋この新約聖書における二つの世界の三様の把握の仕方は然し、各相異る三つの仕方と考えられてはならない。それは同一のことを一と息に三様態において、表現する言語がないので斯くせられているわけである。勿論その三様態は救拡史的発展過程において、それぞれ明かにせられたものである。この事は新約聖書の終末観を、この三種の何れかの一つにおいて、且つそれのみに由て理解しようとすることが、大いなる誤謬である事を教えている。 これらの特徴をもつ本書はその内容を次の如く分けられる。

序 文  (一章一節ー十八節)
第一 受肉者の証言(一章十九節ー六章七十一節)
第二 受肉者の対決(七章ー十二章)
第三 受肉者の決別 (十三章ー十七章)
第四 受肉者の磔殺 (十八章ー十九章)
第五 受肉者の復活(二十章)
結 文 (二十一章)

ーーーー

第一章福音書>第四節 ヨハネ伝概説6終わり、次は第四節 ヨハネ伝概説7

ホーム渡辺・岡村著書新約聖書各巻概説>第一章福音書>第四節 ヨハネ伝概説

 
 

コメントを残す

WordPress.com で次のようなサイトをデザイン
始めてみよう