第一節 ヨハネ黙示録概説 5

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第一 「今あること」 (一章四節—三章二十二節) 1

⁋この部分は僕ヨハネが、現在彼の目前にあることとして示されたことを述べている。従ってその内容は次の如く細分される。

(1) 七つの教会に書を贈る理由 (一章四節ー二十節)
(2) 七つの教会に贈られし書簡 (二章一節―三章二十二節)

⁋ヨハネは先ずこの部分の始にこれら七つの教会に対する祝福を宣べ、主イエス・キリストが教会の為になし給いし事と、彼が再び来り給うことと、「もろもろの目、殊に彼を刺したる者これを見ん」と云っている。しかして彼が如何なる状況に在った時、この黙示を与えられたかを、

「神の言とイエスの証との為にパトモスという島に在りき。我主日に御霊に感じいたるに、我が後ろにラッパのごとき大いなる声を聞けり」

と説明している。更に進んで彼が七つの教会に書簡を送るようになった理由を、

「なんじの見る所のことを書に録して…に在る七つの教会に贈れ」

と述べている。この七つの教会は(エペソ・スミルナ・ペルガモ・テアテラ・サルデス・ヒラデルヒヤ・ラオデキヤ)凡て小アジアに在って、その位置は環状をなしている。この七つの地域に近接していたコロサイ・ヒエラポリス・トロアス等が、この表から除かれていることが注意せられる。それには地理的理由も無論あったであろうが、主として聖数「七」の為であったであろう。この個々の教会の間隔を見ると、スミルナはエペソの北四十哩・ペル ガモはスミルナの北四十哩・テアテラはペルガモの東南四十五哩・サルデスはテアテラの南三十哩・ヒラデルヒヤはサルデスの東南東三十哩・ラオデキヤはヒラデルヒヤの東南四十哩となっている(R. H. Charles:The Revelation of St. John, ICC, Vol. I, 1920, p. 26, cf. W. M. Ramsay: Letters to Seven Churches, Map.)”
⁋この七つの教会によって類型的に描かれた「教会」なるものを見ると、そこには極めて不思議なことが発見される。即ちそれは第一のエペソの教会からその叙述が進むに従って、その教会の在り方が退化し、且つその信仰が微温(びおん・ぬるま)的になり、ラオデキヤ教会に至って、それがその極に達しているという点である。この部分においては明かに本書は、教会なるものは時を経ると共に、より良くなるものではなく、より悪しくなるものであるとしているように思われる。
⁋この七つの教会が、如何なる教会であるかという点に関して、古来問題があった。勿論それは地理的に指摘せられ得る具体的教会であったことは明かだが、然しそれは単にこれらの地名によって現わされた具体的の教会を指すのみでないことは、本書の性格とこれらの書簡の内容とによって、容易に理解できる。即ちこの七つの教会は、全教会時代における全時代に亘り、 全世界に存在する教会なるものを、時空的に且つ類型的に示したものであろう。

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第三章 預言書>第一節 ヨハネ黙示録概説 5 終わり、次は第一節 ヨハネ黙示録概説 6

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