第二章 第十九節 ヨハネ書簡概説 7

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二  ヨハネ第二概書説 1

⁋ヨハネ第二書は「長老」——本書の肩書から「ヨハネ」とよばれる——から「選ばれたる婦人および其の子供」に送られた書簡である。この「長老ヨハネ」とよばれる筆者が、何者であるかは、本書からは全く知られない。しかしてこの宛名の中の「婦人」は、あるいは「教会」の象徴的呼称ならんかといわれている。この語は Kyriaで、「主」Kyrios の女性で、教会を「主の新婦」という意味において(コリント後書十一章二節・エペソ書五章二十五節)、その象徴的呼称として用いられたものであろうというのである。この事は第三書に、

「われさきに聊(いさ)さか教会に書きおくれり」

と記されている処から見て(九節)、恐らく正しい想定であろうとおもわれる。 従って「其の子供」とは、その会員を意味することとなる。
⁋本書は第一書の一般的なると異り、その宛名が具体的であるのみならず、筆者と宛名の教会との間には個人的関係のあったことがしられる。彼は「我なお汝らに書き贈ること多くあれど、紙と墨とにて為るを好まず、我らの歓喜を充さんために汝らにいたり、顔をあわせて語らんことを望む」という言において(十二節)、彼のこの教会との個人的関係を明瞭に示している。
⁋本書簡は第一書とともに、非常に多くヨハネ伝と相似たる点をもっている為に、その同じ特徴をもっている第一書と、一連的に共に置かれたものであろう。第一書もその思想の述べ方は、論述的というよりは、むしろ対話的であると感じられるが、本書は更により対話的であるよう に感じられる。
本書の述べんとするところは、真理と聖愛とを両極とする、教会形成に就てである。従って その内容は次の如く分たれる。

挨  拶 (一節―三節)
第一  真理に基く聖愛 (四節ー六節)
第二  真理に基く峻別 (七節―十一節)
結  語 (十二節―十三節)

⁋「長老、書を選ばれたる婦人および其の子供に贈る。われ真をもて汝らを愛す。啻(た)だに我のみならず、凡て真理を知る者はみな汝らを愛す。これは我らの衷に止りて、永遠に共にあらんとする真理に因りてなり。父なる神および父の子イエス・キリストより賜う恩恵と憐憫と平安とは、真と愛との中にて我らと共にあらん」

という本書冒頭の挨拶の言に、既に本書の主題が述べられている。教会の肢(えだ)相互の関係を支配すべきは、先ず愛(アガベ)でなければならない。然しそれは個人的傾向とか、趣味の一致とか、志を等しうすることなどから生れ出ずる愛であってはならない。教会を支配するアガペは、公同的なものであるべき事が、「凡て真理を知る者はみな汝らを愛す」という言に示唆されている。しかしてその愛は真理に由て裏ずけられた愛である。凡そ真理に基かぬ愛等は、教会にとって異質的なものだからである。

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第二章 教会書>第十九節 ヨハネ書簡概 7 終わり、次は第十九節 ヨハネ書簡概 8

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