第二章 第十八節 ペテロ後書概説 2

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⁋この両書簡の間にある差違の極めて具体的な点が二つ注意されなければならない。第一は・この後書には、前書における如き宛名の信仰者の散在している地域の記されていないことと、その結尾の挨拶において、前書における如き個人の名とその関係との記載が一切ないこととである。従って本書のみでは、これが果して具体的に一群の信仰者に宛てられたものであるかを知ることができない。第二は・前書中に全然表われていない使徒パウロとその書簡とに対する言及が本書に現われていることと(三章十五節以下)、殊にそのパウロの書簡が殆んど「聖書の如き」権威を以てみられていたかの如き気分を与えていることとである。前書においてはパウロの名が現われていないことが不思議だといわれたことがあるが、後書においては彼に対する言及のせられ方が不思議だと云われてきた。
⁋この両書簡の間に見出される差異は、如何なる原因で起ったものであるか、之を審(つまび)らかにすることは出来ないが、解釈者はこの差異を記憶しつつ、本書の解釈に当らなければならない。ペテロ後書の目的は、前書の宛名の信仰者に前述の如く、一方には外よりの異端の誘惑に対して、その信仰を堅持せしめんとすることと、他方には教会自身の信仰冷却に対して、その復興を促さんとすることの為に書き送られたものである。先ず前書に就ていうと、この異端を齎(もたら)したものは「偽教師」と呼ばれ、

「彼らは滅亡にいたる異端を持ち入れ、己らを買い給いし主をさえ否みて速かなる滅亡を自ら招く」

者である(二章一節)。彼らが性的の誤謬と利益を求めるという性格をもつは本書から明かだが(二章二ー三・十七節以下)、然しそれがグノーシス派の一派であること以上には、之を明かに性格ずけることはできない。本書はこの異端者に対して、この信仰者を守る為に次の四つの点から教えている。その一は・初期よりの再臨に関する使徒的の証言を教えることによってであり、

「我らは我らの主イエス・キリストの能力と来り給う事とを汝らに告ぐるに、巧みなる作話を用いざりき、我らは親しくその稜威を見し者なり」

・ と記して之を確言し(一章十六節)、併せて変貌の山における主イエスに対する天来の声を引用して、之を証明している。その二は・旧約の預言を引用することによってこの証言を証明することである(一章十九節以下)。その三は・再臨が遅いのは主の憐憫によることであるといい、

「主その約束を果すに遅きは、或人の遅しと思うが如きにあらず、ただ一人の亡ぶるを望み給わず、凡ての人の悔改に至らんことを望みて汝らを永く忍び給うなり」

と記している(三章九節)。その四は・極めて具体的に、再臨を信ずる者と信ぜざる者との生活度の差異に立脚して論じている (三第十節以下)。

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第二章 教会書>第十八節 ペテロ後書概説 2 終わり、次は第十八節 ペテロ後書概説 3

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