第二章 第十八節 ペテロ後書概説 1

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⁋ペテロ後書は前書と同じく「イエス・キリストの僕また使徒なるシメオン・ペテロ」が、彼と「同じ尊き信仰を受けたる者に」書き送った書簡である(一章一節)。この宛名の信仰者は、ペテロ前書が送られた信仰者と同じであった。この事は本書中に

「愛する者よ、われ今この第二の書を汝らに書き贈り、第一なると之とをもて汝らに思い出させ」

という言によって明かである (三章一節)。
⁋このペテロ後書は前書と、その用語・表現形式およびその主題において、著しく異っていることが、昔から注意せられてきた。先ずその用語に就いてみると、指摘せられているそれは非常に多いが、その一つだけを例としてあげてみると、「救主」Savior という語がある。本書はこの語を、五回に亘って用いているが(一章一節・十一節・二章二十節・三章二節・十八節)、前書においてはこの語はただの一回も用いられていない。殊にこの語に対する用法そのものにおいて、本書の特徴が現われている。新約書中の他の書物においては (ルカ伝二章十一節・ヨハネ伝四章四十二節・使徒行伝五章三十一節・十三章二十三節・ピリピ書三章二十節)、凡てイエスの「救の業」を示す為の叙述語として用いられているが、本書においてはこの語を以て、キリスト自身を指し、殆んど「キリスト」に代る語として、個有名詞ともいうべき意味に用いられている。次にこれら両書簡の表現形式の差異に就いてみると、前書は既述せられた如く、その思想表現の形式が専ら旧約的象徴によっているが、本書においてはその事が一切みられない。勿論後書において「ノア」「ロト」および「バラム」に関する言及がみられるが(二章五・七・十五節)、然しそれは単に言及というのみであって、前書が旧約的象徴をその思想表現の全形式としているのとは全く異っている。更に進んで両書の主題に就いてみると、前書のそれは目睫(もくしょう)の間(かん)に迫っている「火の如き試煉」の中で宛名の信者らをして、その信仰を堅持せしめんとする点にあったが、本書のそれは彼らの間に浸透しつつある異端に対して警告する点と、併せて弛緩し冷却せんとする彼らの信仰を鼓舞せんとする点にみられる。

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第二章 教会書>第十八節 ペテロ後書概説 1 終わり、次は第十八節 ペテロ後書概説 2

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