第二章 第十七節 ペテロ前書概説 9

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第三 朽ちざるものの試煉(三章十八節ー五章十一節)

⁋本書によれば、試煉は朽つるものが朽ちざるものを嗣がんが為の必然的過程である。それ故

「愛する者よ、汝らを試みんとて来れる火のごとき試練を異なる事として怪しまず、反ってキリストの苦難に与かれば、与かるほど喜べ、なんじら彼の栄光の顕われん時に喜び楽しまん為なり」

と記されている(四章十二節以下)。しかしてこの部分には

「キリスト汝らを神に近ずかせんとて、正しきもの、正しからぬ者に代りて一とたび罪のために死に給えり、彼は肉体にて殺され、霊にて生かされ給えるなり」

という言を始として、キリスト者が与かるべきキリストの苦難の意義の解明がなされている(三章十八節)。キリストが肉体にて苦難を受け給ったことを想起しつつ、キリスト者は朽ちざるものを嗣ぐ為の試煉に耐えるべきである。これを

「キリスト肉体にて苦難を受け給いたれば、汝らも亦おなじ心をもて自ら鎧え。——肉体にて苦難を受くる者は罪を止むるなり」

という言に示している(四章一節以下)。嗣業に与かる者がそれに適わしくなる為の試煉の必要は旧約にも語られている。 エジプトの奴隷状態から、直ちに約束の地の住民とはなれなかったイスラエルに、四十年の荒野彷徨は必須な試煉の時としてみられている。それ故に

「慎みて目を覚しおれ、汝らの仇なる悪魔、ほゆる獅子のごとく歴廻りて呑むべきものを尋ぬ。なんじら信仰を堅うして彼をふせげ、なんじらは世にある兄弟たちの同じ苦難に遭うを知ればなり。もろもろの恩恵の神、すなわち永遠の栄光を受けしめんとて、キリストによりて汝らを召し給える神は汝らが暫く苦難をうくる後、なんじらを全うし、堅うし、強くして、その基を定め給わん」

とは、選ばれたる族なる教会に対する警告と約束である(五章八節以下)。

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第二章 教会書>第十七節 ペテロ前書概説 9 終わり、次は第十八節 ペテロ後書概説 1

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