第二章 第十七節 ペテロ前書概説 7

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第一  朽ちさるものの嗣業 (一章三節―二章十節)

⁋選民イスラエルは「乳と密のしたたる国カナン」をその嗣業の地として約束された。然しその嗣業は朽ちざる天にある嗣業の地上的象徴にしか過ぎなかった。然しキリストを首(あたま)とする教会こそは、本書の語る如く

「選ばれたる族・王なる祭司・潔き国人・神に属ける民」

即ち選民であって(二章九節)、その嗣業は天にある朽ちざる嗣業である。

「讃(ほ)むべきかな、 我らの主イエス・キリストの父なる神、その大いなる憐憫に随(したが)い、イエス・キリストの死人の中より甦えり給えることに由り、我らを新たに生れしめて生ける望を懐かせ、汝らの為に天に蓄えある朽ちず・汚れず・萎(しぼ)まざる嗣業を継がしめ給えり」

とは、教会にのみ約束された光栄ある嗣業を仰望させる言である(一章三ー五節)。これは如何なる者の侵害に由ても奪われたり損われたりする事のない天的嗣業であるが故に、アッスリヤまたは新バビロン軍によっても如何ともすることのできない性格のものである。然もこの嗣業は旧約の預言者にもまた御使たちにさえも与えられず、ひたすら教会の為に保留されていた嗣業であった。之を語るのが

「汝ら(教会)の受くべき恩恵を預言したる預言者たちは、この救につきて具(つぶ)さに尋ね査べたり。即ち彼らは己が中に在すキリストの霊の、キリストの受くべき苦難および其の後の栄光を預じめ証して、何時のころ如何なる時を示し給いしかを査べたり。彼等はその勤むるところ己のためにあらず、汝らの為(教会)なることを黙示によりて知れり。即ち天より遣わされ給える聖霊によりて福音を宜ぶる者どもの、汝らに伝えたる所にして、御使たちも之を懇ろに視んと欲するなり」

という言である(同十一節以下)。
⁋然らばこの光栄ある嗣業が他の何ものに対してでもなく、教会にのみ排他的に exclusively に許されたという事は如何なる事であろうか。本書は、それは旧約を貫いて示された「われ聖なれば、汝らも聖なるべし」という神の神聖性の要請が、遂に教会において初めて具現せんが為であると告げる。されば

「従順なる子等の如くして、前の無知なりし時の欲に效わず、汝らを召し給いし聖者にならいて自ら凡ての行状に潔かれ。録して・われ聖なれば、汝らも聖なるべし、とあればなり」

と記されている(同十四節以下)。即ち選民イスラエルに対して語り給いし

「われ聖なれば、汝らも聖なるべし」

というその選み主の要請に、イスラエルに代って教会が応答出来るのはこの天的嗣業の故であるというのである。しかしてこの嗣業の教会による確保は朽つる銀や金の如き物に由らず(同十八節)、朽つる種にも由らず、ひたすら朽ちざる永遠の言即ち瑕なく汚点(しみ)なき羔羊(こひつじ)の如きキリストの尊き血に由るものであるという(同十九節)。

「人はみな草のごとく、その光栄はみな草の花の如し・草は枯れ・花は落つ。されど主の御言は永遠に保つ」

からである (同二十四節)。

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第二章 教会書>第十七節 ペテロ前書概説 7 終わり、次は第十七節 ペテロ前書概説 8

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