第二章 第十六節ヤコブ書概説3

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⁋ヤコブはイエスの兄弟の一人で、その兄弟にはイエスを長子として、ヨセ・ユダ・シモンの他幾人かの姉妹があった(マルコ伝六章三節)。

「是その兄弟たちもイエスを信ぜぬ故なり」

という言をみると(ヨハネ伝七章五節)、イエスに対する彼らの態度も略ぼ想像できる。あるいは「イエスを狂えりと謂いて」彼を「取り押えんとて出で来」った者の中には、ヤコブもあったかも知れない(マルコ伝三章二十一節)。またイエスの宣教を、恥かしいことに思って、彼が群衆に語りつつある時に、彼を呼び出して、それを止めようとした「母と兄弟」の中にも、ヤコブがいたかも知れない(同三十一節以下)。従ってイエスの宣教が非常に進んできても、ヤコブ及びその他の兄弟らのイエスに対する態度は、皮肉または 嘲笑のそれであったらしい(ヨハネ伝七章三節以 下)パウロのいうところによると、ヤコブは結婚して家庭をもっていた事が知られている(コリント前書九章五節)。
⁋然るにこのヤコブが突然ペンテコステ以後、エルサレム教会の重要な指導者の一人になっていることが見出される。即ちパウロが回心後アラビアから出てきてのち三年を経て、エルサレムに上洛した時会ったのは、ペテロの他には

「主の兄弟ヤコブとのほかいずれの使徒にも逢わなかった」

と記されている(ガラテヤ書一章十九節)。またペテロが牢獄から出されてのち、ヨハネ・マルコの母の家を訪ね、そこで自己の救い出されたことを、

「ヤコブと兄弟たちとに告げよ」

といって、ヤコブがこの地の教会で重要な位置をもっていたことを示している(使徒行伝十二章十七節)。また所謂最初の教会会議の時、今日の言でいうと、議長の位置を占めておったのは彼であって、彼が

「之によりて我は判断す」

と、この会議の最後的結論を下した人であった(同十五章十三節以下・十九節)。またパウロはその最終のエルサレム訪問の時、「ヤコブの許に往」ったが、そこには恰度「長老たちみな集りいた」と記されている(同二十一章十八節)。

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第二章 教会書>第十六節ヤコブ書概説 03  終わり、次は第十六節ヤコブ書概説 04

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