第二章 第十二節テモテ後書概説 4

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第二  真理に堪える強さ (二章十四節―三章十七節)

⁋福音の為の苦難に堪える目標は、あくまでも福音の「真理の確立」におかれなければ徒労である。然ればテモテに対して

「なんじ真理の言を正しく教え、耻ずる所なき労勤人(はたらきびと)となりて、神の前に錬達せる者とならんことを励め」

とパウロは命じている(二章十五節)。ヨハネ伝は主イエスがこの世に来り給いし目的を、

「我は之がために生れ、之がために世に来れり、即ち真理につきて証せん為なり。凡て真理に属する者は我が声をきく」

という言に述べている。本書もまた、教会と世との差異はその真理に対する態度にあることを強調する。教会は真理の御霊の支配する群であるが、この世の姿は「真理に堪えざるもの」のそれである。この在り方を本書は

「人々健全なる教に堪えず、耳かゆくして私慾(よく)のまにまに己がために教師を増し加え、耳を真理より背けて昔話に移るとき来らん」

と述べている(四章三節以下)。
⁋斯く真理に堪えないという事は、その結果自己の慾求を以て凡ゆる事の規準とすることになるが、その事の恐るべき結果を本書は、

「脱疽(だっそ)のごとく腐れひろがる」

ことに喩えている。しかして旧約からの例をもひいて、イスラエルのカナン入国に際しての指導者モーセに逆ったヤンネとヤンブレの事件を

「真理に逆うもの、心の腐れたる者、また信仰につきて棄てられたる者なり」

と評している (三章八節)。この世は斯くの如く真理から耳を覆うことに由てひたすら腐敗と下降の一途を辿る。それ故パウロは

「凡(およ)そキリスト・イエスに在りて敬虔をもて一生を過さんと欲する者は迫害を受くべし。悪しき人と人を欺く者とは、ますます悪にすすみ、人を惑わし、また人に惑わされん。然れど汝は学びて確信したる所に常に居れ。なんじ誰より之を学びしかを知り、また幼き時より聖なる書を識りし事を知ればなり。この書はキリスト・イエスを信ずる信仰によりて救に至らしむる知恵を汝に与え得るなり」

とテモテに告げている(同十二節以下)。この世の人は、己が慾を規準として、限りなく教師を増し加えているが、 伝道者はその信仰と生活の規準を「神の感動により、教といましめと矯正と義」に富む聖書におくべく要請される。苦難に堪え抜く伝道者の目標は、伝道者が福音の真理に堪える強さにあるからである (同十六節以下)。

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第二章 教会書>第十二節テモテ後書概説 4 終わり、次は第十二節テモテ後書概説 5

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