第二章 十一節 テモテ前書概説 2

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⁋テモテは肉体的には決して強健という人ではなかったらしい。パウロは彼に対して

「今よりのち水のみを飲まず、胃のため、又しばしば病に罹る故に、少しく葡萄酒を用いよ」

と書き送っている(前書五耳二十三節)。同時にその容貌態度等も、必ずしも立派というのではなく、寧ろ周囲から軽ぜられる傾向があったらしい。従ってパウロはコリント教会に宛てて「テモテもし到らば怪しみて汝等のうらに懼れなく居らしめよ…..されば誰も之を卑しむることなく、安らかに送りて我が許に来らしめよ」と書き送り(コリント前書十六章十ー十一節)、更に彼に対しても

「なんじ年若きをって人に軽んぜらるな……信者の模範となれ」

と訓誠の言を送っている(前書四章十二節)。
⁋テモテはまた伝道者として、「錬達」とはいわれているが、然し必ずしも精神的に強靱ではなかったらしい。この点に就てもパウロは、彼に

「わが子よ、汝キリスト・イエスにある恩恵によりて強かれ」

といい、また

「汝わかき時の慾(よく)を避け……義と信仰と愛と平和とを追い求めよ」

といっている(後書二章一節・二十二節)。彼は

「幼き時より聖なる書を識」

っていたが、啻だ議論が好きであったのでもあろうか、パウロは彼に

「愚かなる無学の議論を棄てよ」

と注意を与えている (同三章十五節・二章二十三節)。
⁋テモテは実に忠実なるパウロの伴侶であり、同労者であった。パウロの至る処殆ど彼の居ない処はなかったようである (テサロニケ前書三章二節・六節・コリント後書一章十九節・口マ書十六章二十 一節等)。殊に彼はパウロが獄に投ぜられたのち、不断に彼と共にあったらしく、いわゆる獄中書簡には彼の名が現われている(ピリピ書一章一節・二章十九節・ピレモン書一節・コロサイ書一章一 節等)。また彼自身へブル書の筆者と共に一とたびは獄に投ぜられた (十三章二十三節)。しかしてパ ウロの最後に当って

「なんじ勉めて速かに我に来れ…..汝きたる時わがトロアスにてカルボの許に遺しおきたる外衣を携えきたれ、また書物、殊に羊皮紙のものを携えきたれ」

と、その身辺の個人的用事を頼まれるほど、パウロに近き人であった(後書四章十三節)。これによって彼の人格がよく窺われる。

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第二章 教会書>十一節 テモテ前書概説 2 終わり、次は十一節 テモテ前書概説 3

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