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第二 価値転換の原型 (二章) 1
⁋教会が逆う世に対して泰然自若(たいぜんじじゃく)として立つ為には、価値転換の福音を仰いで心を一つにすべきである (二章二節)。 パウロはピリピ教会に対し
「この故に若しキリストによる勧・愛による慰安・御霊の交際、また憐憫と慈悲とあらば、なんじら念(おもい)を同じうし、愛を同じうし心を合せ・思うことを一にして・我が喜悦(よろこび)を充たしめよ」
と記している(同一節以 下)。 興味を異にし・利害を異にする人間相互が、心を一つにするということは、然し「キリスト・イエスの心を心とする」ことを離れては全く空中楼閣に等しい。然れば本書は「何事にまれ、徒党また虚栄のためにすな、おのおの謙遜をもて互に人を己に勝れりと為よ。おのおの己が事のみを顧みず、人の事をも顧みよ。汝らキリスト・イエスの心を心とせよ」と命じている(同三節以下)。
⁋然らばこの「キリスト・イエスの心」とは何であろうか。それは
「即ち彼は神の貌(かたち)にて居給いしが、神と等しくある事を固く保たんとは思わず、反って己れを空しうし、僕の貌をとりて人の如くなれり」
といわれている如く(同六節以下)、イエス・キリストがその神と等しき位置を否定して、自己を空しくし給いしことである。自己を空しくする事が真の謙遜である。斯く自己を空虚化して人となり給いしイエスの自己謙虚こそ、神の子の絶大なる価値転換である。 これこそ福音の構造である価値転換の原型である。
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