第二章 第五節ガラテヤ書概説1

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 ⁋ガラテヤ書はパウロの使徒職に対する信認を失うと共に、ユダヤ的キリスト教の律法主義に譲歩せんとしたガラテヤ諸教会に対して、自己の使徒職を弁明し、併せてその教理的誤謬を是正せんが為に書かれた、使徒パウロの書簡である。パウロが「ガラテヤの地」に伝道したのは 前後二回で、一度はその第二伝道旅行の時で(使徒行伝十六章六節)、次は第三伝道旅行の時であった(同十八章二十三節)。 彼が本書中に

「わが初め汝らに福音を伝えしは」

といっているの (四章十三節)、 この第一回の宣教旅行を指している。しかして、 彼が「初め」 この地に伝道した時は、この人々は——この書簡の当時の教会の人々——彼を「神の使の如く、キリスト・イエスの如く迎えた」のであった(四章十四節)。
⁋然るに彼がここに教会を建設して、ここを去った後、本書に「かの人々」と呼ばれているユダヤ的キリスト教の指導者らが——使徒行伝のいわゆる「或る人々」(十五章一節等)——この地に来て、この教会の素朴なる信者らを攪乱して、一方にはパウロがイエスの直弟子でないということの故に、彼の使徒職を否認すると共に、他方に人は律法の行為に由るに非(あら)ざれば救われないと教え、パウロの宣教を根底から覆えさんとした。

「我は汝らが斯くも速かにキリストの恩恵をもて召し給いし者より離れて異なる福音に移りゆくを怪しむ。これは福音というべき者にあらず、ただ或る人々が汝らを捜してキリストの福音を変えんとするなり」

と(一章六ー七節) パウロが記しているのは、この事態を云ったのである。

⁋ガラテヤ書は前述の如く、此等一切の誤謬を是正し、自身の使徒職を弁明せんとして記された書簡である。この書簡の特徴は、筆者の語調の鋭いこと、異端に対する攻撃の烈しいこと、教会とその肢(てあし)たる信徒に対する強い熱情が現われていることとである。

「愚なる哉、 ガラテヤ人よ、十字架につけられ給いしままなるイエス・キリスト、汝らの眼前に顕わされたるに、誰が汝らを誑(タブラ)かししぞ」

という言こそ(三章一節)、 本書におけるパウロの語調の鋭さを如実に表現している言である。

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第二章 教会書>第五節ガラテヤ書概説 1 終わり、次は第五節ガラテヤ書概説 2

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