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第二 牧者パウロの施与要請 (八章ー九章)2
⁋ここで彼は、コリント教会にこの施済を奨励するに当って、福音に与(あず)かることの「恵における均衡」(きんこう・つりあい) の原理を適用している。その第一は
「汝らは我らの主イエス・キリストの恩恵を知る。即ち富める者にて在したれど、汝等のために貧しき者となり給えり。こ れ汝らが彼の貧窮(まずしき)によりて富める者とならん為なり」(八章九節)
という言にみられる。即ち、イエス・キリストの贖罪の業そのものが、恵における彼の絶大なる富と、我々の貧困との均衡(つりあい)を目的としているということである。 福音に与かるということは先ずこのおどろくべき恵の贈与に畏れおののくことであり、その贈与の意味する恵の均衡の原理によってその生活全般が浸透されることである。第二は
「これ他の人を安くして汝らを苦しめんとにあらず、均しくせんとするなり。即ち今なんぢらの余るところは彼らの足らざるを補い、後また彼らの余る所は汝らの足らざるを補いて均しくなるに至らんためなり」
と記し(八章十三節)、更にこの均衡の原理の所在を明かにせんとし、
「録して多く集めし者にも余る所なく少く集めし者にも足らざる所なかりきとあるが如し」
と出埃及記の言を引照している(十六章十八 節)。 即ちイスラエルが、 エジプトにおける奴隷状態から約束の地に入るまでに必要であった訓練期間に、彼らに与えられた経済的原則がここに想起されている。彼らイスラエルは沙漠で 天よりのマナ(食物)を与えられたが、そのマナの具体的な分配方法を示され、その結果は
「多く集めし者にも余る所なく、少く集めし者にも足らざる所なかりき」
と録された如きものであった(出埃及記十六章参照)。従って此のパウロのコリント教会への勧めも、旧約を貫いてイスラエルが理想として教えられていた「力倆(りきりょう)に応じて働き、必要に応じて受ける」という、社会的経済的原理を教会の実践面にも適用せよということであった。しかして
「此の施済(ほどこし)の務は、ただに聖徒の窮乏を補うのみならず、充ち溢れて神に対する感謝を多からし」
めることを看過せざるよう勧めている(九章十二節)。
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