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第二 負債 の 倫 理 (十二章―十五章) 3
(2) キリストに在る負債性(十三章)
⁋この部分にはキリストの体なる教会の肢を支配すべき負債感が何であるかが規定されている。この部分の中心をなす言は
「汝等たがいに愛を負うのほか何をも人に負うな」
という勧告である(十三章八節)。 即ちキリストの体の肢たる者に要請される負債感は、「愛を負う」という対他的愛の負債以外の何ものであってもならないという事である。それ故
「汝らその負債(おいめ)をおのおのに償え、貢を受くべき者に貢をおさめ、税を受くべき者に税をおさめ、畏るべき者をおそれ、尊ぶべき者をとうとべ」
と命じられているのである(同七節)。即ち
「凡ての人、上にある権威に服(したが)うべし。そは神によらぬ権威なく、あらゆる権威は神によりて立てらる」
という言も、愛を負うの他何ものを人に負わない態度の分析である(同一節以下)。愛の負債感のみが
「隣(となり)を害(そこな)わず、この故に愛は律法の完全(まったき)」
だからである(同九節以下)。然しキリストの体なる肢の担うべき負債感は、空間的社会的に人に対して愛を負うのそれのみではない。同時にそれは時間的には「時」そのものをもキリストへの負債として受け取り直しつつ生きることである。之を語るのが
「なんじら時を知る故に、いよいよ然(しか)なすべし。今は眠りより覚むべき時なり、始めて信ぜし時よりも今は我らの救近ければなり。夜ふけて日近ずきぬ、然れば我ら暗黒の業をすてて光明の甲(よろい)を著るべし」
という勧告の言である(同十一節以下)。
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