第二章 第二節 ロマ 書 概 説16

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第二 負債 の 倫 理 (十二章―十五章) 1

⁋ロマ書第十二章以下に新しい內容的展開をみるということは、文学的にいっても正典的にいっても自然なことである。それは前述せし如く、第十二章一節の

「されば兄弟よ、われ神のもろもろの慈悲によりて汝らに勧む、己が身を神の悦び給う潔き活ける供物として献げよ、これ霊の祭なり」

という勧の「されば」という接続詞は、明かに前半の凡てを受ける言であり、後半と前半とを連結せしめる言であるからである。即ち本書の前半に語られた神の恩寵としての 福音は、神に対する人間の負債感を覚醒せしめるものである。従ってこの「されば」という接続詞は、この人間の対神的負債に遡源せしめ、且つそれが当然要請する人間的責務を指示する言である。然しこの言につづいて述べられている後半は、普遍的な性格をもつ倫理としての人間的責務ではないということに注意しなければならない。結論的にいえば、その勧告は凡て、キリストの体なる教会の肢としての責務であり、倫理である。この項が「福音に立つ教会的責務」ともみられる所以である。これを指示するのが

「人は一つ体におおくの肢(えだ)あれども、凡ての肢その運用を同じうせぬ如く、我らも多くあれど、キリストに在りて一つ体にして各人(おのおの)たがいに肢たるなり」

という言であり、以下の勧告は凡てこの「キリストの体なる教会の肢」に求められる実践的指示からなっている(十二章四節以下)。本書の第八章において既述せし如く、我らが神の子たる事の確証を与える聖霊は、我らに被造者的連帯感をめざましめる主体である。 然れば教会こそは聖霊に由て創始せられた「連帯性」の具体的協同体 Gemeinschaft なのであ る。さて「負債の倫理」なる以下の勧告は次の四項目に区分される。
(1) キリストに在る連帯性 (十二章)
(2) キリストに在る負債性 (十三章)
(3) キリストに在る寛容性 (十四章―十五章十三節)
(4) キリストに在る祭司性 (十五章十四節—三十三節)

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