第二章 第二節 ロマ 書 概 説14

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第一 福音の論理 (一章十八節—十一章三十六節)9

(4) 福音による対選民的省察 (九章ー十一章)1

⁋以上の三項において、福音が「万民に救を得しめる神の恩寵」である事が立証された。その意味で、キリストを信ずる信仰によって義認された団体である教会は、宇宙救拯という神の聖旨達成の「器」である。然し断じてそれは、この教会がイスラエルの位置と全意義とを「完全に」奪ってしまった事を意味しない。選民イスラエルはその一時的挫折「にも拘らず」、神の選の不変なる事の証 (あかし)として立つものであ る事に注目せしめるのが、此の項の位置と目的である。
⁋さて第九章に読み至るとき、この部分と前の部分とにおいて、読者は使徒パウロにおける相矛盾せるものが、緊張関係におかれていることを発見する。即ち彼は前項の終りにおいて

「われ信ず……我らの主キリスト・イエスにある神の愛より、我らを離れしむるを得ざることを」

といっていながら (八章三十八ー三十九節)、この部分の始に

「若し我が兄弟わが骨肉のためにならんには、我みずから詛(のろ)われて キリストに棄てらるるも亦(また)ねごう所なり」

と記している(九章三節)。即ち前者は彼の「上への愛」を語り、後者は彼の「横への愛」を語っている。しかして両者は全き緊張関係におかれている。茲に読者は、一と度び祖国との連関を絶対的に断ち切ったパウロが(ピリピ書三章三ー八節)、もう一度その祖国愛を告白していることを見出す。これこそ実に自然的祖国愛を棄てて、聖別せられたるそれを告白している使徒パウロを示すものというべきである。

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第二章 教会書>第二節 ロマ 書 概 説14 終わり、次は第二節 ロマ 書 概 説15

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