第二章 第二節 ロマ 書 概 説02

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⁋さて旧約聖書は「選民」を場とするキリスト証言であり、新約聖書は「教会」を場とするキリスト証言である。然しながら新約正典は選民と教会とが決して滑らかに入れ替ったものとはしていない。実はこの両者の相剋は、選民対異邦人という形で示されている。即ち福音書は選民に由るイエス傑殺 (たくさつ)を以て閉じ、そこに選民の自殺的行為を提示している。然るに続く第二区分の冒頭の使徒行伝は、教会時代の突入と教会の創設とを語ることにおいて、そこに神の対異邦人的顧慮を告知した。その意味で教会はいわば、選民と異邦人との「邂逅の場」である。然し使徒行伝ではその邂逅はあくまでも「強いられたる邂逅」という形で提示されている。それはペテロがその対異邦人的迷蒙と偏狭を、天よりの異象に由て打破せられねばならなかった出来事を通しても明示されている(使徒行伝十一章八節以下)。約言すれば使徒行伝は、 前述の如く(十三章四十六節・二十八章二十六節以下)、福音宣教が、選民イスラエルから異邦人へと転向した「歴史的理由」を述べたが、続くロマ書はその「神学的根拠」を述べている。その福音の対異邦人的転向の神学的根拠とは、凡て

「人は信仰に由てのみ神の前に義と認められる」

という事である。この点からみれば、ユダヤ人たると異邦人たるとの別はない。この意味においてロマ書は、「福音の公同的宣言」の書である。 然しこの事はパウロが、選民の歴史的特権を全的に否定したということを意味していない。即ち彼は使徒行伝において彼の行く先々の伝道を開始するに当り、「先ず」ユダヤ人の会堂を求め、そこでユダヤ人に対してイエスを証し、しかして後対異邦人伝道を開始した。本書においても彼はこの順序を

「ユダヤ人を初め」(“to the Jew first”) (ギリシャ人にも)

という句を以て、忠実に表現することを忘れなかった(一章十六 節・二章九節・十節)。

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