第二章 第一節 使徒行伝概説 36

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第三 異邦人・キリスト教会の発展 (十三章ー十八章)9

(2) 教会宣教の対外的弁証(二十二章三十節ー二十八章三十一節)1

この部分は本書叙述の最後の段階として、パウロのユダヤ人に由る迫害と訴訟の結果が反って対外的に福音を弁証する機会となり、 遂にユダヤ人の悪意が転用されて、彼がロマにまでその宣教の策源地を画する途が開かれたことを叙している。この部分は次の出来事からなる。
一 ユダヤ議会のパウロ審判 (二十二章三十節ー二十三章十一節)
二 カイザリヤ駐在総督による審判 (二十三章十二節ー二十五章十二節)
三アグリッパ王とパウロ (二十五章十三節—二十六章三十二節)
四 パウロの羅馬護送 (二十七章一二十八章十五節)
五 ローマ獄中のパウロ (二十八章十六節ー三十一節)
⁋この部分は「明くる日、千卒長かれ (パウロ)が何故ユダヤ人に訴えられしか、確かなる事を知らんと欲して彼の縛を解き、命じて祭司長らと全議会とを呼び集めた」という言を以て始められ、「ユダヤ人がパウロを訴える理由如何?」という事がこの叙述の中心的主題である事を暗示している(二十二章三十節)。 先ずパウロはユダヤの最高議会で審問をうけたことが記されているが、ユダヤ人が何故パウロを公けに訴えるかという問に対して、

「兄弟たちよ、我はパリサイ人にしてパリサイ人の子なり、我は死人の甦えることの希望につきて審かるるなり」

と答え、紛争はいよいよ激化した(二十三章六節以下)。然しその夜、主はパウロの傍らに立ち、

「雄々しかれ、 汝エルサレムにて我につきて証をなしたる如く、ロマにても証をなすべし」

と告げ給うた (二十三章十一節)。 又カイザリヤ駐在総督の審問では、

「我ただこの一事を女にいいあらわさん、即ち我は彼らが異端と称うる道に循いて我が先祖たちの神につかえ、律法と預言者の書とに録したる事をことごとく信じ、かれら自らも待てるごとく義者と不義者との復活あるべしと、神を仰ぎて望みを懐(いだ)くなり。この故にわれ常に神と人とに対して良心の責めなからんことを勉む」

といい、

「唯われ彼らの中に立って、 死人の甦える事につきて我けう(今日)汝らの前にて審かると呼わりし一言の他には何もなかるべし」

と、その訴の理由を解明している(二十四章)。アグリッパ王の前のパウロの弁明も

「今わが立ちて審かるるは、神が我らの先祖たちに約束し給いしことの希望に因りてなり。これを得んことを望みて我が十二の族は夜も昼も熱心に神に事うるなり。王よ・この希望につきて、我はユダヤ人に訴えられたり。神は死人を甦えらせ給うとも、汝等なんぞ信じ難しとするか」

という熱弁を以て、旧約聖書の指示する処と、彼の活ける復活の主との出遇いの事実とを語ることによって、ユダヤ人の訴の理由の誤謬を論証している(二十六章六ー八節)。ここに、復活の主の証を拒むユダヤ人の動機の矛盾が、余す処なくあばき出された。 即ちこれは彼らがその選民史を貫いて俟望し来った希望の具現を拒否するという自己矛盾の極みだからである。

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第二章 教会書>第一節 使徒行伝概説 36 終わり、次は第一節 使徒行伝概説 37

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