第二章 第一節 使徒行伝概説 34

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第三 異邦人・キリスト教会の発展 (十三章ー十八章)7

(1) 教会宣教の対異邦人的転向 (十三章ー二十二章二十九節)7

⁋第四に・この宣教の過程は常に連続して明瞭な聖霊の指示があったわけではなかった。本書の前半には聖霊の直接的指示を示す記事が多いが、後半に至るとそれは次第にうすれて、反って人間の「信仰的判断」が要請されているという事に気ずく。即ち本書の記す処に拠れば、福音がアジアよりヨーロッパに伝えられたという基督教史に特筆すべき出来事は、実は聖霊の「消極的」指導に対して、人間の「積極的判断」が行われた結果敢行せられたことであった(十六章六節以下)。即ち

「彼らアジアにて、御言を語ることを聖霊に禁ぜられたれば……ムシヤに近き、ビテニヤに往かんと試みたれど、イエスの御霊、許し給わず」

と、聖霊の指導の消極的な事を語り、

「パウロ夜、幻影 (まぼろし)を見たるに、一人のマケドニヤ人あり、立って己を招き、マケドニヤに渡りて我らを助けよという。パウロこの幻影(まぼろし)を見たれば、我らは神のマケドニヤ人に福音を宣べ伝えしむる為に我らを召し給うことと思い定めて、直ちにマケドニヤに赴かんと為り」

と記し、この「思い定め」た元訳に「推し量りて」とあるがその如くに――という言に、人間の信仰的判断の価値と必然性とを示唆している (十六章十節)。

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第二章 教会書>第一節 使徒行伝概説 34 終わり、次は第一節 使徒行伝概説 35

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