第二章 第一節 使徒行伝概説 26

ホーム渡辺・岡村著書新約聖書各巻概説>第二章 教会書>第一節 使徒行伝概説

第二 ユダヤ・キリスト教会の形成 (三章ー十二章)11

(2) 散らされたる教会 (八章四節ー十二章二十五節)1

この部分は更に細かく見ると、次の如き順序で記されている。

一 ピリポのサマリヤ伝道 (八章四節ー二十五節)
二 エチオピヤ顕官の改宗 (八章二十六節ー四十節)
三 サウロの改宗 (九章一節—三十節)
四 ペテロの巡回宣教 (九章三十一節ー四十三節)
五 ペテロとコルネリオ (十章一節ー十一章十八節)
六 アンテオケ教会の創設 (十一章十九節ー三十節)
七 母教会指導者の迫害 (十二章一節ー二十五節)

⁋以上の構造に即してその歴史的展開をみると、この部分は「教会に対する聖霊の先行」を示している。 先の「建てられたる教会」の項は「教会に対する代の反抗」を示したが、「散らされたる教会」の項は、「教会に対する聖霊の先行」を中心として描かれている。この構造の展開が語るのは、時代からの逆いの的である教会は、その時代との相剋のさ中に、教会に先行し給う聖霊の働きを仰がせられていたという事である。新しい聖霊の時代に生きる使徒らは、その新しい地平とその視界において一大展望を与えらるべきであった。しかしてその開眼は聖霊自らが教会に先行し給いし結果に他ならなかった。先ず大迫害の結果散らされて、ピリポはサマリヤ伝道に着手するよう導かれ、主の使の先行は彼をして更にエチオピアの女王の権官に授洗せしめる迄になった。一方サウロは相変らず

「主の弟子たちに対しておびやかしと殺害との気を充し」

ていた時、突如活ける主イエスに面接し、

「サウロ・サウロ・何ぞ我を迫害するか」

という声をきいた(九章四節)。彼はそこで、 教会と一体なる主イエスが活けるキリストである啓示を受けたのであった。斯くて彼は「異邦人・王たち・イスラエルの子孫のまえにキリストの名を持ちゆくその選の器」とされたのであった。然るこのサウロが選ばれる時には、他方に同時にアナニアが準備され(九章十節以下)、次のペテロの開眼に際してはイタリア隊の百卒長コルネリオが準備されていた(十章)、という事実を見のがす事はできない。これは聖霊の働きは 同時に異れる者において顕われ、両者を符合的に出遇わしめ、そこに彼らを超えた聖霊の働きの御手を鮮かならしめるという事を示し、ここに本書の聖霊観の特徴を見る事が出来る。

ーーーー

第二章 教会書>第一節 使徒行伝概説 26 終わり、次は第一節 使徒行伝概説 27

ホーム渡辺・岡村著書新約聖書各巻概説第二章 教会書>第一節 使徒行伝概説

 
 

コメントを残す

WordPress.com で次のようなサイトをデザイン
始めてみよう