第一章 第四節 ヨハネ伝概説2

ホーム渡辺・岡村著書新約聖書各巻概説>第一章福音書>第四節 ヨハネ伝概説

⁋第二に・先在のロゴスたる本書のイエスは、その身辺に起る一切の出来事はいう迄もなく、 その民族の将来に対しても、これを予知し、且つ見透し給う神の子として録されている。また この意味において本書によると、このロゴスの受肉者から隠されたものは一つもない。イエスは凡てを事前に見透し給う姿において提示されているのはこれが為である。例えば、ヨハネ伝のみが

「われ汝ら十二人を選びしにあらずや、然るに汝らの中の一人は悪魔なり」

という主の言に、イエス自ら彼を裏切る者はユダなる事を最初から知り給いしものとしている(六章七十節)。あるいはナタナエルの人物を見透し給いし事とか、

「然れどイエス己を彼らに任せ給わざりき。それは凡ての人を知り、また人の衷にある事を知りたまえば、人に就きて証しする者を要せざる故なり」

という記事等にもそれは明示されている(一章四十八節・二章二十四節等)。
⁋第三に・このロゴス・キリストが「全知」であるという観方は、当然本書の特異なるキリスト観——即ちロゴス・キリストは「歷史の原」(原歴史)なりとする——に導く。本書は主イエスが、パリサイ人との論争において、

「アブラハムの生れいでぬ前より我は在るなり」、

または

「汝らの父アブラハムは、我が日をみんとて楽しみ、且つ之を見て喜べり」

と答え給うたことを記している (八章五十六・五十八節)。 即ち本書はこれらの言によって、先在のロゴスなるキリストが、「歴史」を見返し、これを凡て予知し給うということを示している。

ーーーー

第一章福音書>第四節 ヨハネ伝概説2終わり、次は第四節 ヨハネ伝概説3

ホーム渡辺・岡村著書新約聖書各巻概説>第一章福音書>第四節 ヨハネ伝概説

 
 

コメントを残す

WordPress.com で次のようなサイトをデザイン
始めてみよう