第一章 第四節 ヨハネ伝概説1

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⁋ヨハネ伝の主題は「神の言の受肉者なるイエス」、即ちロゴス (言)・キリストである。

「太初 (はじめ)に言あり、言は神と共(とも)にあり、言は神なりき。この言は太初に神とともに在り、万の物これに由りて成り、成りたる物に一つとしてこれによらで成りたるはなし」

という本書冒頭の言は、世の創始(はじめ)の前から「先在したロゴス」こそ、全被造物に対する「創造のロゴス」である事を証しし、

「言は肉体となりて我らの中に宿りたまえり」

という言によって、 このロゴスの受肉者こそ、ナザレのイエスである事を証ししている(一章十四節)。
⁋この「先在のロゴス」が受肉して、ナザレのイエスとなったのであると叙べている序文は、 ヨハネ伝の独自性を顕わにするものであると共に、これをして共観福音書から全く異らしめる ものである。しかしてこの事は更に次の諸点に顕(あら)われている。
⁋先ず第一に・本書のこの特色は、その提示形式において現われている。共観福音書は「この地上を歩み給いしナザレのイエスは実に神の子であった」という叙述をしているが、ヨハネ伝 はその逆に、「先在し給いし神のロゴスが受肉してナザレのイエスとなった」という叙べ方をし ている。その意味で共観福音書が「下から上へ」という方向をもつといわれるなら、ヨハネ伝のは全く反対に「上から下へ」という方向をもつ提示形式である。これによってヨハネ伝はイエスの生涯の凡ての出来事を、 この「先在のロゴス」 という一点から 再解釈して提示している。ヨハネ伝のこの特色を顕わにする他の顕著な例は、共観福音書がイエスの福音の宣べらるべき対象たる「世」を語るのに、好んで時間的意味を示す「アイオン」Aion という語を用いているのに反して、ヨハネ伝のみは一貫して、空間的意味を示す語なる「コスモス」Kosmos を用いているという事である。それはいう迄もなく、本書の示すイエスが、創造のロゴスであり、 このロゴスこそ混沌たる宇宙に原秩序を与えることに由て、これを「秩序ある世界」(コスモス)として形成し、それが破砕された時、更にこれを再形成する者であるからである。

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第一章福音書>第四節 ヨハネ伝概説1終わり、次は第四節 ヨハネ伝概説2

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