第一章 第三節 ルカ伝概説17

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第四 神国キリストの指示 (二十四章)2

⁋更にその十一弟子に対する復活の主の顕現の記事にも、ルカ伝のみが「かれら怖じ懼れて見る所のものを霊ならんと思いしに」と記し、弟子等の無智と狼狽振りを叙し、しかして復活の主は「変化(へんげ)の霊」に非ず、十字架にかかり給い、弟子らと曾ては共に歩んだイエスである事を証拠立てる為、彼らの炙(あぶ)つた魚の一片をまで食し給うた事を禄している(同丗八節以下)。
⁋最後の・昇天直前のイエスの語り給いし「汝らは此等のことの証人なり。視よ、我は父の約束し給えるものを、汝らに贈る。汝ら上より能力を著(あらわ)せらるるまでは都に留まれ」という言もルカ伝特有のものである(同四十七節以下)。この言において、誤れる前提に立つ下からの人間的待望が癒される途が指示されている。本書の後篇ともいうべき使徒行伝が語る「聖霊降臨」こそは、十字架の贖罪的意義を開示し、その贖罪のみが人間の衷なる「我執」を超克せしめるからである。
⁋叙上の意味において、神国キリストが宣べた如き理想的社会の究極的条件は、必然的にその告知者を十字架につける運命に至らしめるのである。然しこの十字架こそ、神国理想の実現を妨げる「我執」を贖うものである事を示すのが聖霊である。斯くルカ伝は神国キリストを証し することにより、神国という理想的社会実現の究極的条件を明示し、且つその条件を人間において具現せしめる「聖霊」の降臨を指示する書である。

ルカ伝概説 終わり、

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