第一章 第三節 ルカ伝概説15

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第三 神国キリストの否認 (十七章—二十三章)3

⁋叙上の如く、本書は「悔改め」を神国に入る絶対条件として要請し給いし神国キリストの否認が、全く避けがたきことであった事を語ってきた。その否認の理由は、これを「上から」、神学的に表現すれば、前掲の

「此の言かれらに隠れたれば、その云い給いしことを知らざりき」

という説明となる(十八章三十四節・九章四十五節)即ら神が聖旨によって特定の時までは、充全な理解を許し給わなかったという観方である。然しそれを「下から」説明すると、人間の衷にひそむ「我執」が彼をして「悔改め」を拒否せしめているという事になる。本書は「悔改め」を拒み「悔改め」を神国入国の絶対的条件として迫り給う神国キリストの否認に、「上から」と「下から」の両側面から説明を与えている。ここに「悔改め」を拒む人間の衷なる我執が、神の国を齎(もた)らしたキリストを否認した結果十字架につけた事が明示された。これは他でもない、神国という理想的社会を俟望する人間の心の奥底には、これに憧れながら、然もその実現を阻み、その絶対的条件を拒否するものが、彼等の心の王座を占めているということである。理想的社会の建設を夢見る人間が、その実現を阻む主脳者である!  これこそ人間的矛盾の最大悲劇である。

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第一章福音書>第三節 ルカ伝概説15終わり、次は第三節 ルカ伝概説16

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