第一章 第三節 ルカ伝概説9

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第二 神国キリストの要請 (四章ー十六章) 2

⁋イエスがこれをレビ記からでなく、イザヤ書から引用なし給うたのは、深き意味があったことと想われる。即ちイザヤ書のこの言は、このレビ記の規定を預言者的色彩と含蓄において解釈したものであり、そこに俟望せられているメシヤの国の姿を描いているからである。いうまでもないが、社会の救を抜きにした個人の救はなく、個人の救を抜きにした社会の救もない。 その意味で人類全体に「恩寵」として来るイエスは、神の国を知らす「大釈放者」である。この言にも救い主イエスを神の国と切断して考える事の絶対的誤謬なることが明示せられている。神の国という理想的社会は、先ずイザヤ書第十一章にも指示されている如く、そこにおいてはいとか弱い者と雖(いえど)もの他社の犠牲となることなく、その個性を全うし得る世界である。然れば神の国キリストこそは、貧しき者を顧み、囚人に赦しを与え、盲人には見ゆる事を得しめ、被圧迫者を解放する「自由の回復者」である。ルカ伝を通じて、貧者・被圧迫者への特別な関心がみられているのはこの為である。彼らこそは現在の姿に満足せず、現状の変革を求める者でありその点からいって、彼らは変革俟望の切なることを以て、その特徴とする者だからである。

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