第一章 第三節 ルカ伝概説6

ホーム渡辺・岡村著書新約聖書各巻概説>第一章福音書>第三節 ルカ伝概説

第一  神国キリストの俟望 (一章ー三章) 1

⁋ルカ伝は俟望に始まり、俟望に終る書である。然し冒頭の俟望は「神国キリスト」に対するそれであり、結末の俟望は「聖霊」に対するそれである。先ず本書の冒頭には、ルカ伝特有のイエス誕生物語が記されている。本書の証しするイエスは前述の如く、「神の国キリスト」であり、 大釈放(ヨベル)の告知者キリストであるから、彼の誕生はこれを俟望する者に先ず第一に「恩寵」を意味する。 恩寵とはそれを受くる価値なき者に与えられる賜物である。祭司ザカリヤはイエスの先駆者として生まるべきヨハネの誕生の告知を受けた時、これを信じ難く、

「何に拠りてか此の事あるを知らん、我は老人にして、妻も年邁(すす)みたり」

と答えたことが記されている(一章十八節) 。また続く、マリヤへの受胎告知の記事もマリヤはその告知に対して、

「心いたく騒ぎ、斯(かか)る挨拶は如何なる事ぞと思い廻らした」

と記されている(同二十九節)。斯く記すことにより本書は、建国以来約束されて俟望し続けて来たイスラエル人にさえ、恩寵としてのイエス誕生は、信ずることの出来ぬような驚きであった事実を語っている。 続くマリヤの讃歌にも、この恩寵が

「神は御腕にて、権力をあらわし、心の念に高ぶる者を散らし、権勢ある者を座位 (くらい)より下し、卑しき者を高うし、飢えたる者を善きものに飽かせ、富める者を空しく去らせ給う」

こととして歌われている(同五十一節)。ザカリヤの讃歌ではこの恩能が

「この憐憫によりて朝(あした)の光、上より臨み、暗黒と死の陰とに坐する者をてらし、我らの足を平和の路に導かん」

と歌われている(同七十八節以下)。またイスラエルの慰められんことを待ち望むシメオンは、イエスをとり抱いた時、

「是もろもろの民の前に備え給 いし者、異邦人を照す光、御民イスラエルの栄光なり」

といった(二章二十九節以下)。

ーーーー

第一章福音書>第三節 ルカ伝概説6終わり、次は第三節 ルカ伝概説7

ホーム渡辺・岡村著書新約聖書各巻概説>第一章福音書>第三節 ルカ伝概説

 
 

コメントを残す

WordPress.com で次のようなサイトをデザイン
始めてみよう