第一章 第二節 マルコ伝概説14

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第三 権能者イエスの期待 (八章二十七節ー十四章九節)2

⁋然し結論は匆急(そうきゅう)に下されてはならない。本書は、神の国は自力の極限的発揮を待つ、だがそれによってのみ来るものではない、と告げようとする。神の国が若し人間の自力によって「のみ」来るものであるならば、それは人間的自力への報酬でこそあれ、「福音」ではない。神の国の来臨は自力の限界を超えての出来事なるが故にこそこれは福音なのである。

「神の国は近づけり、汝ら悔改めて福音を信ぜよ」

というイエスの宣教は、神の国の近づきはあくまで福音であると告げているのである。してみると我々はマルコ伝が二つの相矛盾する事柄を、神の国来臨に対して述べているのをみる事になった。即ち神の国は人間的努力の尽されない処には来らない。然し神の国は人間的努力によっては来らない、という提言がそれである。この矛盾せる提言はこれを一口にいうと次の如くなる。神の国は人間の自力的可能性の限界を超えて来臨するものであるということである。これが本書の教えるところである。

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第一章福音書>第二節 マルコ伝概説14終わり、次は第二節 マルコ伝概説15

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