第一章 第一節 マタイ伝概説9

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第一 メシヤの回復する歴史 (一章ー四章) 3

⁋続いてイエスの荒野における誘惑の記事も(四章一節以下)、本全体の指示する光に照らしてる時、それは選民に代って誘惑に勝ち給いし成就者を提示するものである。即ちこの誘惑においてイエスはこれを一々、「申命記」の言を以て退け給うたものとされている。即ち

「人の生くるはパンのみに由るにあらず、神の口より出ずる凡ての言に由る」

という言、及び「主なる汝の神を試むべからず」または

「主なる汝の神を拝し、ただ之にのみ事へ奉るべし」

という言等は、凡て申命記からの引照である。申命記とはイスラエルの背反と失敗とを予想して、これに過去の神よりの恩寵の懐古と、将来の審判の警告とを与えんが為に記された特殊な律法書である。イエスがこれによって誘惑に勝ち給うたという事は、唯だに神の言に由て誘惑に勝った事を示すのみならず、イスラエルの失敗を予想して与えられた律法書の言に従う事により、その失敗を償うという意味が、本書においては盛られているのである。この荒野の誘惑から帰り給うた時を指し、本書は

「この時よりイエス教を宣べはじめていい給う、なんじら悔改めよ、 天国は近ずきたり」

とその宣教の第一声を叙べている(同十七節)。 斯く失格せる選民の歴史を踏み直し、その過去の改造をその一身に為し遂げ給うメシヤこそ、イスラエルの「真の遺残者」 (理想的イスラエル)なのである。

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第一章福音書>第一節 マタイ伝概説終9わり、次は第一節 マタイ伝概説10

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