第一章 第一節 マタイ伝概説7

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第一 メシヤの回復する歴史 (一章ー四章) 1

⁋マタイ伝の証しするイエスは、

「われ律法また預言者を毀つために来れりと思うな。 毀たんとて来らず、反って成就せん為なり」

とある如く、旧約の成就者としてである(五章十七節)。律法及び預言者が与えられたのは、いう迄もなく選民イスラエルであった。然し彼らは神の律法を遵守せざるのみか、彼等をして神の律法に聴従せしめるよう警告せんが為、神から遣わされた預言者をも拒(しりぞ)けて来た。随って選民の歴史とは、いわばその選み主に対する背反を以て綴らた歴史であり、それは選民的使命蹂躙の歴史であった。その背反の歴史を明瞭に記念するのがイスラエルのバビロン虜囚の出来事であった。マタイ伝はその冒頭のイエスの系図に、このイスラエルの失敗の歴史を銘記する為、「バビロンに移さるるまで」という言をわざわざ挿入している(一章十七節)。 またマリアの許嫁(いいなづけ)した夫ヨセフに対する主の使のイエス誕生告知にも、

「汝その名をイエスと名ずくべし。己が民をその罪より救い給う故なり」

と記し(同二十一節)、 選民の歴史が罪に彩(いろど) られし失敗の歴史であったことを暗示し、イエスはその歴史の回復者でなければならない事を結論させる。

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第一章福音書>第一節 マタイ伝概説終7わり、次は第一節 マタイ伝概説8

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