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⁋マタイ伝は新約聖書の冒頭におかれ、旧約と新約とを結びつける役目を担った書である。即ち本書の証しするイエスは、旧約を貫いて選民イスラエルに約束され来りしメシヤ(救い主)であり、旧約に語られた凡ゆる「約束」の成就者である。新約書の冒頭に「世界万民の救い主」としてイエスを証言するルカ伝がおかれずして、選民イスラエルに約束されたメシヤとしてのイエスを証言するマタイ伝が、置かれているという事は、新約書編纂後においてもたれるようになった特殊の意図に因った事である。というのは聖書は旧新約両書ともに、常に「選民から異邦万民へ」という特殊な救拯の意図を以て貫かれているからである。
⁋この事はマタイ伝におけるイエスが、その弟子十二人を遣わすに当って、これに
「異邦人の途にゆくな、又サマリヤ人の町に入るな。寧ろイスラエルの家の失せたる羊にゆけ」
と命じ給うた言においても(十章五、六節)、 また異邦人の為の福音宣教の器として選まれた使徒パウロの言においても、明らかに示されている(使徒行伝十三章五節・十四節・十四章一節等)。殊にパウロはその公書簡(書簡)ともいうべきロマ書に、
「この福音はユダヤ人を始めギリシヤ人にも」
と記しているし、(一章十六節) またヨハネ伝の序文にすらも
「かれは己の国にきたりしに、已の民は之を受けざりき」
と記され(一章十一節)、イエスが先ずその民即ちユダヤ人に来りし救主であるとしている事によっても、よく知り得られる。
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