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ミカ書 2/3
第一 審判の警告 一章ー三章
⁋此の部分は「イスラエルの審判」(一章一一九節)・「イスラエルの哀歌」(同十一十六節)・「社会正義と審判」(二章一—十一節)・「指導者の堕落」(三章一ー八節)・「誤れる確信と首都の荒廃」(同九一十二節) の五部に分たれる。但し第二章十二節及十三飾は次の区分に含ませることとする。
(1) イスラエルの審判 一章一節ー九節
⁋先ず万民に向ってその聖殿より語り給う神の證の言が述べられ、南北両王国の代表者としてのサマリヤとエルサレムとの罪が責められている。北王国の都サマリヤは、紀元前七二二年アッスリヤ に依て攻め陷(おと)された。此の包囲は足掛け三年続いたが、モレシテにあったミカはその破壁機の響を聞いた。「サマリヤの傷は醫(いや)すべからざるもの」とはそれを聞いている彼の言であった(一章九節)。 それは一にその偶像礼拝の為であった。
「その石像はみな砕かれ、その獲たる値金はみな火にて焚かれん、我その偶像をことごとく毀たん」
とは実に此の罪の暴露であった(一章七節)。
(2) イスラエルの哀歌 一章十節ー十六節
⁋此のエルサレムとサマリヤに関する審判の言を語った預言者は、之を語りながらも、愛鄉者としての心は痛まざるを得なかった。彼の先輩アモスが北王国の滅亡を預言しながら、然も之に対する哀歌を歌わざるを得なかったように、ミカの想も荒廃するであろう故郷の山々邑々に対して哀歌を歌ったのであった。茲に上よりの言を宣言させられる預言者の信仰と、下から祖国えの愛情を感ずる彼の心情との矛盾が表現されたのであった。
(3) 社会正義と審判 二章一節ー十一節
⁋茲には当時南北両王国共通の経濟的繁栄の結果として(イザヤ書二章七節、五章八節等)富豪と貴族との下層民圧迫の状態が暴露せられ、厳しく責められている。選民イスラエルの中に斯かる事はあるべきではない。もはや此の民の上に定められた審判は眼前に見えている。
「その日には人汝らにつきて詩を作り、悲哀の歌をもて悲哀みて云はん、事既にいたれり、我らは盡(ことご)く滅ぼさる」
とは (二章四節)ミカの観たイスラエルの受くべき審判であった。
(4) 指導者の堕落 三章一節ー八節
⁋此の部分には選民イスラエルの指導者の堕落が、完膚なき迄に抉(えぐ)り出されて居る。「我云ふ・ヤコブの首領よイスラエルの家の候伯よ」と云う言を語りかけとして、政治的指導者の罪が責められている。殊に偽の預言者に対する彼の言は辛辣で、
「我民を惑はす預言者は歯にて噛むべき物を受くる時は平安あらんと呼はれども、何をもその口に與へざる者にむかひては戦闘の準備をなす」
とまで 云っている(三章五節)。
(5) 誤れる確信と首都の荒廃 三章九節ー十二節
⁋斯(か)かる状態にありながら、その上に神の審判が定められているのも知らず、イスラエルは指導者も民衆も共に、エホバにより頼みて云ふ・エホバわれらと偕に在すにあらずや、然らば災禍われらに降らじ」(三章十一節後半)と偽の確信の上に立っていた。 実に此の状態はアモスが見た北王国の状態と全く同様であった(五章十四節)。
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