第三章 第二節 エレミヤ書概説  3

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⁋エレミヤの預言が書物として録されたことは、現在その第三十六章に録されている。イザヤに対してもその預言を書き録せと云う命令の与えられたことがあるが(三十章八節)、然しエレミヤの場合のように詳細にその経過の記録されているものは旧約聖書中にも少ない。先づエレミヤは神から「エホヤキムの四年」(六〇四年?)、

「汝巻物をとり我汝に語りし日即ちヨシヤの日より今日に至るまでイスラエルとユダと万国とにつきてわが汝に語りしすべての言を之に録せ」

と命ぜられた(二節)。 そこで彼はその書記バルクを呼び、それ迄与えられた言を、

「ことごとく巻物に録」さしめた(四節)。

此の時エレミヤは獄中に在ったので、彼はバルクをして神殿に於て此の記録したものを民の前に読ませた。更に翌年九月断食の日に神殿の上庭に於て、此の記録から民の前に読みきかせられた(九節以下)。此の事が王の耳に入ったので、その巻物が王の前に読まれた。時は九月で、王の前に暖爐があったので、王はその最初の一部分が読まれると、之を小刀で切断し、之をその暖爐に投げ入れて焼いてしまった(二十節以下)。然るに此の事があってその後再び神はエレミヤに

「前の巻物の中の言をことごとく其に録せ」

と云う命令を与え給うた(三十八節)。そこで再びバルクに命じて

「エホヤキムが火に焚きたるところの書の諸の言」

を録さしめたが、バルクは

「外にまたかかる言を多く之に加えた」(三十二節)。

此處で此の「外にまたかかる言」と云う句が重要になってくる。現在のエレミヤ記はその研究に於て大いなる困難な問題がある。その一はその内容を区分することに於て、旧約書中最も困難だと云う事である。年代的配列でもなく、多少主題的配列のやうに見えていて嚴密に云えばさうなっていないし、殆どその系統的区分は不可能である。之には旧約書中の他の書物に於てもみられるように、後人の添加又は挿入と云うことも考えられなければならないが、然しその最大の原因は前述の書記バルクが「外にまた斯る言を多く之に加へ」たことであったであろう。

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