第二章 第二節 詩篇概説4

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(1) 個人の世界2/4

(b) 人の苦悩する世界

⁋此の不義者の間に義者が置かれているのである。共処に当然義者の苦悩が発生せざるを得ない。此の苦悩の裡に置かれたる義者の祈が、「かくて幾その時を経たまふや」 と云う愁訴となつている(六篇三節、十三篇一節、三十五篇十七節、七十九篇五節、八十九篇四十六節等)。 此等の詩に於ては此等の世界に於ける義者の苦悩が、各種の面に於て歌われている。それは実に自己を欺むく隣人と・二心をもつものとの交渉より出ずる苦悩であり(十二篇二節、二十八篇三節、四十一篇九節、五十二篇七節等)、その口に異質なく、諂らいの舌をもつ者との交渉より出ずる苦悩である(第五篇九節、六十二篇四節等)。殊に義者の耐え難く感じたのは、彼らの友にして彼らの親しき者であり

「互にしたしき語らひをなし、また会衆のなかに在りてともに神の家にのぼり」

たる者の裏切りであり(五十五篇十二ー十四節)、また

「わがたのみしところわが糧をくらひしところのわが親しき友さヘも我にそむきてその踵をあげたり」

と云う苦悩であつた (四十一篇九節)。こうなると実に信仰の友の間に於てすら、真の信頼をもつことの出来ないと云う、人生に於ける深刻なる苦悩となってきたのであった。

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舊約聖書概説>第二節 詩篇概説4、終わり、次は第二節 詩篇概説5

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