第一章 第十節 「列王紀略概說」6

ホーム渡辺・岡村著書舊約聖書概説>第一章>第十節 「列王紀略概說」

第三 分裂王国時代 1/2

⁋此の部分は(上十二章ー下十七章)ソロモンの子レハベアムの尊大にして、賢からざる処理の為、遂に北部十族がダビデ王家より分離して国を成すという分裂の事実から、イスラエルの選み主なるエホバに対する背信の為に、遂に国家の滅亡を招來するという事実迄を含んでいる。此の両王国に於ける王の人物から見ると、その信仰の点に於ては南に傑出した者があり、ヒゼキヤ及びヨシアの如きがそれであり、その政治性の点に於てみると北に傑出した者があり、北のオムリ、アハブ及び ヤロベアム二世等がその尤(すぐ)なるものであった。此のうち信仰の点に於て勝れた者に就ては後に述べる事として、此處では政治的に卓越していた北王国イスラエルの王に就て見る。先ず第四王朝のオムリとアハブである(上十六章二十二節以下)。オムリは第三王朝の王ジムリを倒して自立し、首都をテルザよりサマリヤに遷し、此處に北王国繁栄の基を礎えた。彼は北方ダマスコ王国南方ユダ王国に備える為、フェニキヤのツロと同盟を結び、その王女イゼベルを自己の後継者アハブの妃として入れた。その子アハブもその政策を踏襲して、王国は益々栄えた。旧約書には錄されてないが、此の勢を以てアハブは近傍の話王国を糾合(きゅうごう)して、対アッスリヤ同盟を結び、北方の巨人に抗したが、カルカルの一戦に敗れた(八五三年)。此の物質的政治的繁栄は、極めて高価な値を以て贖われた。王妃イゼベルはその故郷のバール礼拝をイスラエルに残し、新都サマリヤの中央にバールの神殿を建て(上十六章三十二節)、多くのバアルの預言者を養った。 之と共にフェニキヤの商業主義の精神が農業国イスラエルに輸入せられ、アハブ王さえもその精神に影響せられ、約束の地カナン土着以來の神聖なる「産業」(伝来の土地)に対する農民の権利と感情とを蹂躙させるまでになつた(上二十一章)。 是こそ実にイスラエルに於ては神人共に赦さざる悪業であつた。是が此の王朝の倒される原因となり、預言者エリヤの出現を促す刺激となった。

ーーーー

舊約聖書概説>第十節 「列王紀略概說」6、終わり、次は第十節 「列王紀略概說」7

ホーム渡辺・岡村著書舊約聖書概説>第一章>第十節 「列王紀略概說」

 

コメントを残す

WordPress.com で次のようなサイトをデザイン
始めてみよう