第一章 第七節 「士師記概說」5

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第三 弛緩の宗教的結果 十七ー十八章

⁋此の部分は本書全体の編纂者が「当時イスラエルには王なかりしが」と(十八章一節)、選民に王なくまた指導者なく、極度に弛緩せる狀態を描く為に添附せる部分である。偶像を作る事を禁ぜられ、祭司はレビ人たるべき事が教えられて居たにも不拘、偶像を作り、レビ人ならざる者を祭司として神殿を作ったという、此の一エフライム人の物語は、その歴史的起源はさておき、本書の一部部分として読まれる時、選民の弛緩状態を知らしめられるには、極めて適切なるものであった。一エフライム人ミカと云う者があって、鋳物師に一つの偶像を鋳させ、自分の家に厨子を作り、我子を祭司として、之に奉仕せしめた。然るに一人のレビ人が偶然衣食を求めて旅して來たので、之に自分の家に留り、祭司たる事を求めた。然るに当時ダン族の人々未だ産業の地を得なかった為、此の地方にその土着地を求めて侵入し來り、当時のライシ後のダンにおもむき、其處に土着する事となった。然るに此の地におもむく途中ミカの家の厨子と之に奉仕する祭司とを見て、

「汝我らと共に來り、我らの父とる祭司ともなれよ」

と強制的に之を伴い、またミカを脅かしてその厨子を奪い去った。此の物語の終に

「神の家のシロに在りし間つねに彼らはミカが造りし、かのきざめる像をかざりおきぬ」

と錄されて居る。此の言に明かに此の編纂者の意図が現れて居る。即ち個人としてのミカの場合にも、部族としてのダンの場合に、選民の中心的エホバ礼拝所シロ(サムエル前書一章三節)を無視して、此の像と厨子とが造られた事を述べ、当時の弛緩狀態を明示せんとしたものである。

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