第一章 第七節 「士師記概說」4

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(3) 士師サムソン(十三章ー十六章)

⁋ギデオンの後イスラエルは更に背信的となり、トラ・ドイル・エフタ・イブザン・エロン・アブドン等を経て、ペリシテ民族の圧迫を受ける事となり四十年間是が為に悩んだ。此の時神はサムソンを士師として起し給うた。サムソンは他の士師とは、全くその趣を異にして居る。彼はナザレ人 即ち「献けられたる者」として(民数紀六章)葡萄酒及び濃酒を飲まず、その頭は剃刀を當てないように育てられた(十三章四節以下)。 長ずると共に「エホバの霊」が彼と共に在ったので、彼は常にその能力を表はし、猛獣を倒し、敵ペリシテ人を悩ました。彼が一人のデリラと云う婦人を愛するに及んで、彼の破綻の端緒が開かれた(十六章)。彼の超自然的能力の秘密は、彼の剃刀をあてざる頭髪にあった。ペリシテ人はデリラに来って、彼の此の秘密を知り、彼女に迫って、その頭髪を切り取らしめた。彼女の膝から、頭髪を切られし事を知らずして目醒めたサムソンは、既にその能力を失い、遂にペリシテ人の捕虜となり、獄中で奴隷の業なる穀物の磨臼をひかせられた。然しその中にそのそり落された髪の毛がまた伸び始めて居た。時は恰度ペリシテ人の神ダゴンの祭の時であった。彼らは彼を獄中から引き出し、之に戯技を行わしめた。サムソンは共の時眼球を抉出(けっしゅつ)せられて居たので、見えざる眼を見張り、自己の手を引く少年に、ペリシテ人の群集して居るその建物の中央の柱に自分を連れ行かせた。

「時にサムソン、エホバに呼ばはりいひけるは、ああ主よねがはくば我を記念(おぼえ)えたまへ、鳴呼神よねがはくは唯今一度我を強くして、わがふたつの眼のひとつのためにだにも、ペリシテ人に仇をむくひしめたまへ」

と祈ると共に(十六章二十八節))彼はその中央の柱の二つを抱え、之を倒したので、その上の全觀衆と共に、壮烈なる死を遂げた。此の悲壮なる士師サムソンの物語を以て此の部分は閉じられて居る。

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