第一章 第二節 「出埃及記概說」2

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(2) 解放の使者

⁋神は苦難の中にあるその民を解放する為に、民自身の之を知らない間に、解放の使者を選び且つ教育をなし給うた。その使者こそイスラエルの大指導者モーセであった。本書はイスラエルの苦悩を叙べながら、その十二族中のレビ族に生れた彼が、不思議な摂理の下にエジプト王の宮廷に養はれ、事あってシナイ山麓ミデアンの地に逃れ、そのミデアン族の祭司の婿となり、その羊を飼いながら「四十年」を此の地に過した事を記している(本書二章)。然るに四十年を経て、彼は或る日シナイ山又の名ホレブ山にその外舅(がいきゅう)の羊を飼って居た時、祖父の神の顕現に接し、その民イスラエルの解放にあたるべき使命を受けた。

「然(され)ば来れ。我なんぢをパロにつかはし汝をして我が民イスラエルの子孫をエジプトより導き出さしめん」

とは、神の人モーセを造った神よりの召命の言であった (三章十節)。彼は此の召命に接した時埃及の宮廷でうけた人間の教育のあたえた自信を全く打砕かれ、自己に何等能力なく、特に此の使命貫徹に関して重要なるべき弁舌(べんぜつ)に於て、何等長所を持たざる事を痛感し、此の召命を辞退した。神は之に対して、彼の兄にして雄弁なるアロンをその補助者として遣わすべき事を約束し、彼を励ましてその召命の信仰に立たせ給うた(四章十〜十六節)。神の前に彼が感じた、自己が無能なりとの深い此の謙虚な態度は、彼をして実(じつ)に此の召命に立ち続けさせた秘密であった。

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