第一章 第一節 「創世記概說」7

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(2)「アダムの系図」 (五章一節)

⁋堕落せる人間の全運命が総括的に此の部分に述べられて居る (五章一節~六章八節)。即ち五章に於ける堕落せるアダムの子孫に関する記述は、必ずその最後に「そうして死ねり」といふ厳粛なる表現を以て閉じられて居る。彼等は凡て驚くべき長寿をあたえられて居るが、しかし「そうして死ねり」であった。

「それ一人の人によりて罪は世に入り、また罪によりて死は世に入り、凡ての人罪を犯しし故に、死は凡ての人に及べり」

という使徒パウロの言は(新約書ロマ書 五章十二節)、彼が創世記の此の五章に於ける、此の厳粛なる表現から述べたものであろう。 此の死の運命にあるアダムの子孫全体が、神の「選び」の聖業の行はれる「地盤」である。

(3)「ノアの系図」(六章九節)

⁋此の死の運命の下にあるアダムの全子孫の中から義人ノアが選び出された。此の部分には(六章九節~九章二十九節)ノア及びその家族以外の全人類が、洪水によって絶滅された事が記されて居る。さうして此の部分の終に(九章十八節以下)、此の「選び」の規準ともなるべき事が、ノアの三人の子等の性格によって示されて居る。即ち前述せし如く宗教的権威たる家長ノアに対する、その三人の子等の態度に於て比の規準が観られる。此處(このところ)で注意せらるべきは、此の三人の子等の態度は、単なる倫理的なるものでなく、同時に信仰的又は宗教的なるものであったという事である。

(4)「セム・ハム・ヤペテの系図」 (十章一節)

⁋此の部分に於て(十章一節~十一章九節)、ノアの 三人の子等の夫々の発展が記され、その結果として、地球上の諸民族の分布が述べられ、遂に「バベルの塔」の出来事により(十一章一ー九節)、全人類が地球上に散らされるに至ったことが録されて居る。そうして此の三人の中よりセムが選び出さるべき理由として、神に背反せる文化の発生とその呪いとが叙述せられて居る。

(5)「セムの系図」(十一章十節)

⁋ノアの三人の子の中より、セムが選び出された。此の部分を観ると(十一章十六節)、極めて特徴的な表現が見出される。即ち前述のアダムの系図の場合には (五章)、その子孫の一人一人の記述に、必ず「而(しか)して死ねり」といふ語が附せられて居るが、此處(このところ)には反対に、一人一人に当たって「男子女子を生めり」と記されて居る。即ち神の呪詛の降ったアダムの全子孫の上には「死」が支配して居るが、神の「選び」の下にあるセムの裔(あとつぎ)には「生」が支配して居る。

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